大判例

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東京地方裁判所 昭和37年(特わ)474号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決要旨〕公職選挙法第二三五条の二第三号および第一四八条の二第三項は、特定の選挙に際し、特定の候補者または候補者となろうとする者の当選を得させまたは得させないことを目的として、新聞紙の編集、発行等の当該新聞事業経営上の特殊の地位にある者が、その地位を利用して、当該新聞紙に選挙に関する報道ないしは評論を掲載する行為自体を刑罰の制裁をもつて未然に防遏しようとするものであつて、具体的な場合に記事内容が事実に即した正当なものであるかどうか、その対象とするところが主として限られた特殊の読者層にあるかどうか、また掲載につづいて頒布行為があつたかどうか等の事情は、問わない法意である。

〔判決理由〕(罪となるべき事実)≪前略≫被告人団孝は、全旅連の機関紙であつた旅館新聞に対抗して昭和三六年一〇月設立され、本社を東京都千代田区神田神保町一丁目六〇番地第一ビル内に置く株式会社日本旅館新聞社の取締役兼編集長として、同社が発行する週刊紙日本旅館新聞の編集に関する業務を統轄していたもの、被告人大谷勲は、全旅連専務理事、旅政連事務局長などの地位にあつて、旅館業界の組織における重要事項の決定にも参画し、強力な発言力を有するなどの事情から、同新聞社の設立と同時に非常勤の取締役として迎えられ、同新聞の編集発行など新聞経営上の重要事項の決定に関し、強力な影響力を有して、いたものであるが、被告人両名共謀のうえ、同年七月に施行を予定されていた参議院議員通常選挙に際し日観連会長畠山鶴吉が全国区から立候補する決意を有することを認識しながら、同人に当選を得させる目的をもつて、同新聞紙に対する被告人両名の前記経営上の特殊の地位を利用して、昭和三七年四月一九日ころ同都港区芝田村町五丁目六番地東京タイムズ印刷株式会社において印刷され、前記日本旅館新聞社において発行された同年同月二〇日付週刊紙日本旅館新聞第二〇号六万八、〇〇〇部<省略>に畠山鶴吉の写真、経歴、人物批評等を紹介する記事とともに、「業界のためには業界代表を」、「旅館業界の試金石」等の標題のもとに、旅館業界においては全旅連等の四団体が、立候補の決意を有する畠山を来るべき前記参議員選挙の候補者として推薦しており、同人を当選させることが、業界発展の基礎となるものであつて、業者全員一致団結して畠山を当選させねばならない旨の記事を印刷させ、もつて選挙に関する報道および評論を掲載したものである。≪後略≫

(法律の適用)≪前略≫被告人大谷および同団の判示第二の所為は、同法(註、公職選挙法)第二三五条の二第三号、第一四八条の二第三項、刑法第六〇条に(公職選挙法第二三五条の二第三号および第一四八条の二第三項の規定は、選挙が選挙人の自由に表明した意思によつて公明かつ適正に行なわれるについての、国民一般の有する利益を保護することを目的としたものであつて、新聞紙が選挙に関して報道し評論する法の保障する自由権を行使するに当つて、取締役ないし編集長等当該新聞事業経営上の時殊の地位にある者が、その地位を利用して、右の自由権の範囲内で記事内容になにらかの影響を及ぼすことは、その影響の仕方の当不当にかかわりなく、一般的には公職選挙法の禁ずるところではないが、右の地位の利用が、いやしくも特定の選挙に際し、一名または数名の特定の候補者または候補者となろうとする者の当落を期待しながら単に支持しまたは反対する限度を超えて、これに当選を得させまたは得させないことを目的として行なわれる場合においては、外観上同一の種類の地位利用行為も、その目的によつて利用者個人の私的な行為と化し、選挙という特殊の状況の下に、ひいては記事内容の選択の公正を期待することが困難となるため、かかる行為の結果選挙に関する報道ないしは評論が新聞紙に掲載されことを自由に放任すれば、新聞紙が一般公衆に対する極めて強力有効な思想伝達の手段としての固有の性格を持ち、かつそれへの掲載が直ちにその領布につながつたものであるところから、後者を待たずして前者の段階においてすでに、公正を欠く選挙に関する記事により選挙が自由、公明かつ適正に行なわれるについての国民一般の利益が害されるに至るおそれがあるので、民主政治の真に健全な発達を庶幾するについての右の利益保護の重大性にかんがみ、法は頒布その他の事情による具体的な危険の発生を待つことなく、かかる掲載行為自体を刑罰の制裁をもつて未然に防遏しようとするものであつて、具体的な場合に記事内容が事実に即した正当なものであるかどうか、その対象とするところが主として限られた特殊の読者層にあるかどうか、また掲載につづいて頒布行為があつたどうか等の事情は、問わない法意であると解するのを相当とする。したがつて、判示第二の所為が、地位の利用の仕方の当不当、その他右のような具体的諸事情のいかんを問うまでもなく、前記各条項に該当することは、明らかである。)、≪中略≫該当する≪後略≫(山崎茂 向井哲次郎 小泉祐康)

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